イナズマ ケンキュウジョ

色々な場所へ投下したSSのリファインしたもの。 現在は「涼宮ハルヒの憂鬱」がメイン。

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Lie-sense

長門が嘘を吐く話。
昨日某所に投下した小ネタの加筆修正版。加筆しすぎ。
というか予告した「SOSvsEMP」はどうした。すまん。



Lie-sense

- * -
「今からあなたに嘘を吐く」

 とある三月の何でもない日。長門しかいない放課後の部室を訪れ、俺が自分で入れた不味いお茶をすすりながら他の団員メンバー、特に癒し系の美少女を待ちわびていた時の事。
 パタンと本が閉じた音がしたかと思えば、突然長門に先のような変な宣言をされてしまった。それで何だって?

「四月一日の万愚節に先んじて、嘘を吐く特訓を行いたい」
 万愚節、つまる所エイプリルフールか。それにしても嘘の訓練とは……いや、まあいいか。
 長門が珍しく能動的な態度を示しているんだ。しかもエイプリルフールの為に嘘の特訓とはなんて人間らしい感覚だ。
 俺が付き合える事ならいくらでも付き合ってやろう。それで嘘を吐くんだったっけか。
「そう。今から言うのは総てわたしが考えた嘘」
 よしわかった。嘘を吐くと宣言されてから嘘を聞くのもどうかと思うが、とにかく聞かせてもらおうじゃないか。
 おそらく長門の人生において初めての嘘ってヤツを。


- * -
「言葉とは曖昧な存在であり、特にこの惑星で使用される言語は時代を経る間に様々な変化を見せる。
 良い意味が悪い意味になったり発音が微妙に違ってきたり、その形はまさに千変万化と言える」
 そうだな。言葉は生きているって意見があるぐらいだ。
 時代の流れ、そして人の変化に合わせて言葉も常に変化していく。それは当然なのかもしれない。
 俺の言葉に長門は静かに頷く。
「現在使用されている言葉は過去の言葉がかなり変化した状態。古語と称される言語と比べてみてもそれは明らか。
 同じように、あなたたちが今使用している言葉もまた、遠い未来に於いてかなり違った意味となってくる」
 ふむ。ここまでの話に嘘は感じられない。つまり今まで語ったのは話の枕、嘘の為の地盤固めってヤツだな。
 中々にこだわっているじゃないか。OKだ長門、話を進めてくれ。

「一例をあげる」
 長門はやはり数ミクロン単位で小さく頷くと、いつもと変わらぬ淡白な口調で語りだした。
「朝比奈みくる。この時代ではただの単語であっても彼女のいる時代では別の意味になっている言葉が当然ある」
 なるほど、そういう切り込み方でくるのか。ならば俺が今ここで言うべき言葉はこれだろう。

「例えばどんなのがあるんだ?」
「例えば。あなたの呼称とされている『キョン』は、彼女の時代では性的な意味での『下僕』を意味している」

 ……は? 何だって? 今こいつとんでもない事を言わなかったか?

「また彼女の名前とされている『みくる』はやはり性的な意味での『姉』を、彼女の苗字である『朝比奈』は同じく性的な意味での『我が女王』を意味している。つまりあなたは無意識的に朝比奈みくるを『我が女王』と慕いあげ、また彼女にとってあなたは性的な意味での『下僕』であると認識されている。
 更に涼宮ハルヒや朝比奈みくるのクラスメートなどは彼女を『姉』、いわゆる『お姉さま』として慕っている事になる」

 終始一貫真剣な表情のまま、長門が良い塩梅に煮込まれた黒豆のような瞳を一度もそらさずに語ってくる。
 始めてあった頃、長門の家に招待されて自分の正体を語った時の風景がフラッシュバックしてきそうだ。
 そのあまりの真剣さに少しだけ不安になってきたので、改めてここで確認させてもらいたい。
 長門。今お前が語ったのは、お前が考えたれっきとした<嘘>なんだよな?

「そう、今のは嘘」
 ま、まあそうだろうな。いくら何でもそんな狙ったかのように都合よく意味が変わる事なんて、
「先の単語、特に『キョン』の本当の意味は過激にして卑猥過ぎる為、未来では犯罪行為となる禁語指定にされている」
 マジかよ!? 俺のあだ名はそれだけで犯罪だっつうのか!?
「今のは嘘」
 え、あ、ああ……そうだったな。嘘って話だったよな。取り乱して悪かった。

- * -
「ネコとタチという俗語がある」
 そこで首を少しだけ傾げ「知ってる?」という表情で伺ってくる。
 一応知ってるぞ。女性同士でごにょごにょする時に攻めるほうが「タチ」で受けるほうが「ネコ」ってアレだろ。
「その「ネコ」の男性版として、愛くるしい表情からか動物の『キョン』と呼ぶ場合がある」
 俺のあだ名今度は「受け」かよ!? 大活躍だなキョン!
「古泉一樹があなたの事を親しみを込めてその呼称で呼び始めたら注意すべき。特に背後に立たれるのは危険」
 いや、そんな淡々とした口調で追い討ちをかけて怖い事を言わないでくれ。マジで古泉が怖く見えてくる。
「……今のは嘘」
 あ、いや、そ、そうだったな。嘘、なんだよな。うん。

- * -
「実は涼宮ハルヒには何の力もない。世界を改変する力を持っているのは、あなた」
 今度はそう来るのか。だがそれは流石にお前が語っても嘘だと認識できるぞ。
「では朝倉涼子は何故一気にあなたを殺さなかった? それはあなたこそ進化の可能性であり、朝倉涼子はあなたを追い詰める事で情報爆発を起こすつもりだったから。もし彼女が本気であなたを殺そうとしていたのなら、ナイフなんて不確定なモノは使わない。インターフェースの能力なら、あなたを確実に、また一撃で殺す方法に絞ってもゆうに百通り以上の案件がある」
 そう言われると確かに謎だ。朝倉は何故ナイフなんかで俺を……って待て待て。だからこれも長門の嘘だという事を忘れるな。

「涼宮ハルヒの役割はあなたの反面教師にして良心。彼女の取る行動は、常にあなたに対しブレーキをかける結果となっている」
 それならSOS団はどう説明する。あれはハルヒが宇宙人、未来人、超能力者と遊びたいからこそできた団なんだろ。
「違う。団の目的はあなたの監視。ゆえに涼宮ハルヒはあなたを最初に引き入れた。もし本当に涼宮ハルヒが望み、結果SOS団が設立されたのならば、SOS団には異世界人がいなければならない。しかし現状異世界人は団員にいない。
 では何故いないのか。それは単純にして明快、涼宮ハルヒが告げた一言があなたを縛ったから」
 ……何だよ、その一言って。
「SOS団設立時に宣言した言葉。『宇宙人、未来人、超能力者と一緒に遊ぶ事』。この言葉によって、あなたはSOS団に異世界人は必要ないと無意識的に判断した。わたしたちが正体を明かしたのも、既にメンバーは揃っているとあなたに伝える為」

 なるほど、筋は通っている。面白い話だ。
 だが映画撮影の時のごたごたはどうなる。鳩が白くなったり、桜が咲いたりしたアレだ。あれも俺が望んだからか?
「鳩が変質したというのは古泉一樹が語っただけ。実際には鳩は変質していない。あれは古泉一樹によって用意された別の鳩。
 桜もまた同じ。『涼宮ハルヒが桜を願ったから桜が咲いた』というシナリオさえ前もって用意しておけば、後はタイミングを見計らいわたしの力で咲かせる事が可能。
 雄の三毛猫もまた然り。あれは涼宮ハルヒが選び取ったネコ。あなたではない。唯一、あなたの力が働いた部分は猫が喋った事。故に古泉一樹はそれ以降心血注ぎ、躍起になってあなたを制そうと動いた」

 じゃあカマドウマは。SOS団のエンブレムがどうのこうのってアレだ。あれはどうなる。
「問題があったのはエンブレムではなく、あなたが作り上げたサイト全体。故にわたしはエンブレムをいじるという名目であなたの作成したサイトも合わせて修正した」

 野球大会は。
「あの時、わたしの力以外であなたの言う、いわゆる不思議な事は何一つ起きていない」
 ……確かに起こってはいない。古泉が電話を受け、閉鎖空間が発生したと「言っただけ」だ。
 ならエンドレスな夏休みはどうなる。あれはハルヒが……。
「ループしていたのは事実。ただしその理由は違う。八月三十日の喫茶店で、あなたは涼宮ハルヒが夏休みを楽しみきってない、不完全燃焼してると読み取った。故にあなたは涼宮ハルヒの為に夏休みをループさせ続けた」

 何てこった……つまりは全部俺のせいって事なのかよ。
「他の全てのイベントに於いて、最重要事項はただ一つだった。つまりは、あなたを楽しませる事。
 涼宮ハルヒに能力があるとした場合の、わたし達の行動に於いての最大の矛盾点を、あなたは既に気づいているはず」
 ……もしかしてアレか、楽しみたいはずのハルヒが何故何も知らないんだ、ってヤツか。
「知らなくて当然。事件の中心にいるのは涼宮ハルヒではなく、また事件によって楽しませる相手も涼宮ハルヒではない。わたしたちが対象としていたのは、常に、あなた」


 衝撃的な事実を打ち明けられ、俺の思考が停止する。
 何だよこれ。つまり今までの騒乱は全て俺のせいだった、そういう事なのか。
「どうなんだよ、長門っ!」
 俺の必死の訴えに長門はほんの少しだけ首をかしげると、先ほどまでと同じ淡々とした口調で告げてきた。


「……今のは、全部、嘘」



 ……どっと疲れた。


- * -
「宇宙では自分がお気に入りと決めた場所は神聖な場所として認識されており、そこへ他者を誘うという行為は宇宙共通の求愛行為であるという共通見解がなされている」
 は、ははは……そりゃまたメルヘンな話だな。
 先の話で精も魂も尽きかけている俺は惰性的に返答した。

「……また、図書館に」
 宇宙的プロポーズの言葉だったのかよ、それ。それは気づかないで悪かった。お前なりの一大決心だったんだな。
 ……すまん、長門。どうやら俺のハートは自分が思っていた以上にチキンだったようだ。これ以上は嘘に耐えられそうにない。
 代わりといっちゃ何だが、今度二人で図書館に行こうじゃないか。んで、ゆっくりだらだらと過ごす事にしよう。
 それで手打ちにしてくれないか。

「そう」

 長門はそれだけ言うと自分の持つ本を開いていつもの読書モードに突入した。
 正直、疲れた。俺もう帰っていいか。
 机に突っ伏しぐったりしていると、遠くの方から駆け足で部室に近づいてくる足音が聞こえてきた。

 どうやら俺に休む時間は一秒たりとも無いようだ。


 ちなみにこの後数日間、俺は朝比奈さんに「キョンくん」と呼ばれる度に何だか下僕扱いされているような気分に陥る事になる。
 さらに古泉が近づくたびに何やら不安な気持ちが心をよぎるようになったし、ハルヒの無茶な叫びを聞くと何やら心のどこかで自制心が働くようにはなっていた。
 もう金輪際、長門には嘘を吐かせないようにしておこう。
 そうだな、次に図書館に行く時にでも釘を刺しておくか。俺はそう心の中で決意した。





- * -
「宇宙では自分がお気に入りと決めた場所は神聖な場所として認識されており、そこへ他者を誘うという行為は宇宙共通の求愛行為であるという共通見解がなされている。

 そう、今の話は────」

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