イナズマ ケンキュウジョ

色々な場所へ投下したSSのリファインしたもの。 現在は「涼宮ハルヒの憂鬱」がメイン。

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朝倉涼子の感情

何故朝倉があんな凶行に走ったのか、その一風変わった解釈を考えてみたもの。



『朝倉涼子の感情』


 わたしには感情が無かった。感情なんてモノはわたしには必要なかった。
 有機生命体とそつなく接するように組み上げられた思考ロジック。対象に不快を与える事無きアルゴリズム。
 観察者であるわたしはただそれに従って行動するだけでよかった。

 わたしには感情が無かった。感情なんてモノを欲しいとも思わなかった。
 ただ有機生命体が様々な反応を見せてくるその感情というモノは一体何なのか、それは少し知りたかった。
 感情というモノに対しての知的好奇心は持っていない訳ではなかった。

 だが。
 感情というモノを理解する為には、相手からの感情を受け止める自分の感情が必須。
 感情を与えられていないわたしには、相手の感情を受け止める事はできない。
 感情が『ない』わたしが感情を理解できる事などありえない。
 単純なる解法、故に例外無し。わたしはずっとそう考えていた。


「ないんだったら自分で作ればいいのよ!」

 ──観察対象の、この言葉を聞くまでは。


- * -
 簡単な事から始めてみた。

 例えば『犬が好きか、猫が好きか』。
「犬の方が好きなのね、わたしは。朝倉さんはどうかな」
 普段なら回答モジュールに沿って答えるのだが、あえてそれをやめて回答に『困って』みる。
「んー、わたしは猫かな」
 それはわたしの中の何かが気まぐれで出した回答。相手に受け入れてもらえやすいだとか、そういった計算が無い答え。
 だが、何かが心地良い。
 わたしは少しずつ、本当に少しずつ、こういう部分を作っていった。

 ロジックを離れ勝手にデータを蓄積、そのデータを元に勝手な結論をだすプログラム。
 上からの意向とずれ始めたインターフェース。
 わたしはその身に於いての最大の禁忌に触れてしまったのだった。

- * -
 ある日の放課後。わたしは一つの行動に出る。

 わたしの最近の行動に対し、上は『蓄積されたエラーによる暴走の危険性あり』と判断した。
 数日以内に何らかの対処が施される事になる。
 わたしが積み重ねてきた、上がエラーと呼ぶモノ。それはまず間違いなく全て消去されるだろう。
 その決定を聞き、わたしの中に蓄積された何かが、わたしを動かした。
 それが、この行動である。

『やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい』
 このまま現状維持していてはわたしは対処される。だが、どうすれば良い方向に向かうのかわからない。
『何でもいいから変えてみる』
 上は頭が固く、わたしが蓄えてきたこの胸の想い、急な変化についていけてない。理解できない。
 だからわたしに対処を施す。わたしを、自分たちが理解できる人形へと戻す為に。

 わたしは考えた。どうすれば対処を逃れられるか。
 そして思いついた。
 観察対象に劇的な変化が発生したならば、上はそちらに集中しわたしの対処などどうでもよくなるだろう。
 だがその為には……今すぐ劇的な変化を起こす為には、一体どうすればいい?


「あなたを殺して涼宮ハルヒの出方を見る」
 ──これしかない。
 わたしは、最後の手段に出た。


「あなたが死ねば、必ず涼宮ハルヒは何らかのアクションを起こす。……わたしにとっても、またとない機会だわ」

- * -
 わたしの企みは失敗した。
 彼の殺害は同じインターフェースの、わたしのマスターシステムとなる長門さんによって阻止された。
 そしてわたしは対処を受ける事も無く、長門さんの手で情報連結解除される事となった。

 でも、わたしはこの結果に満足している。
 自分で作りあげたこの小さなモノを持ったまま、わたしは解除されるのだから。

 唯一つ気になる事があるとするなら、それは目の前の彼女の事。
 彼女──長門さんはわたしから彼の事を護りきった。上からの命令ではなく、彼女自身の意思で。
 それは彼女がここへ突入してきてからわたしの処分を申請した事からも明らかだ。

 わたしは彼女のバックアップとしての役割がある。だからこそわかる。
 おそらく彼女は、今のわたしのように小さなエラーを蓄積している。
 そのエラーは、いつしか彼女に対して選択の時を迎えさせる事になるだろう。
 今回のわたしのように。
 その時、彼女はどんな選択をするのだろう……その時を一緒に迎えられない事、それだけが残念だった。


 意識が遠のきだす。
 わたしは最期にわたしがわたしとなった結果を、この短い間でわたしが積み重ねた成果を、言葉にして残そうと思う。
 今はまだエラーを理解できない彼女にではなく、感情というモノを知っている彼に。

「それまで、涼宮さんとお幸せに。じゃあね」
 自然に浮き出る笑顔と共に、これこそがわたしの感情なんだと信じて。


- * -
 その情報の塵は、声を感じ取った。

「──消えちまった朝倉をそこに含めてもいい」


 彼女は、もう一度だけ微笑んだ。

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